※この事業は静岡県主催、静岡銀行共催、ホールアース自然学校が企画・運営を行っています。
2024年11月4日(月・振休)、浜松市のアゴラ浜松にて、第1回生物多様性セミナーを実施いたしました。
第1回目のテーマは「生物多様性保全を支える見えない力ー中間支援の役割と重要性ー」
“中間支援”というワードは聞き慣れない方も多くいらっしゃるかと思いますが、例えば「行政と地域」、「地域と企業」等、異なる立場の方々の間に立ち、目標に向かって連携が上手くいくように事を進める存在のことを言います。
生物多様性の保全においても、中間支援の存在が欠かせません。
なぜ必要なのか?具体的にはどのように支援をしているのか?他団体との協働におけるポイントは?等々をテーマに、講師の方にお話いただきました。
最初の30分は環境省の和田さんより、自然共生サイト等、生物多様性保全に関する制度説明をしていただきました。生物多様性保全における要点を改めて整理できた時間となりました。
基調講演でお話いただいたのは、NPO法人Green Connection TOKYO代表理事の佐藤留美さん。
佐藤さんは、“みどりの力”をまちづくりに活かそうと、公園の管理やコンサルティング、コミュニティの醸成や人材育成等に尽力されています。
講演の中では、みどりを活かしてまちづくりをしている先進事例として、ニューヨークなどの海外の例をあげ、企業と保全団体など異なるステークホルダーがどのようにつながり、ネイチャーポジティブなまちづくりを行っているのかを示していただきました。
そんな佐藤さんが最後に仰っていたのは「中間支援って、駆け込み寺みたいなもの!」
ネイチャーポジティブを進めていく中で、困りごとや悩みごとが生まれたときに、何か聞いたら教えてくれる、人を紹介してくれる、中間支援の団体や人をそんな風に思って活用してもらいたいとのこと。
「こことこことつなげたら、こんなことができるかもしれない!」と、わくわくしながら解決策を提示してくださるような、そんなイメージが自然と湧いてきました。
中間支援の事例を発表してくださったのは、立教大学スポーツウエルネス学部准教授の奇二正彦さんと、認定NPO法人しずおか環境教育研究会(エコエデュ)の柴崎千賀子さん。
奇二さんは、長野県の生坂村におけるリジェネラティブ(環境を再生する)・ツーリズムを作っていく中で、どんな人々がどのように関わり、そしてコンテンツがどのように魅力的になっていったのか、そのプロセスをお話いただきました。
プロジェクトがいい方向に向かうその背景には、ブランディングに長けている人、ツアー企画に長けている人などキーパーソンの存在が大きいが、さらに行政の理解と協力があると、ものごとはより進みやすい。一方で、村の価値を活かしたプロジェクトを作るためは、まずはその土地のことを知らなくてはならない。奇二さんは、植物や動物といった生物学的な観点からの土地の価値、寺社仏閣や伝統文化といった人文学的な観点からの土地の価値など、あらゆる観点からその土地の価値を調査し、見定め、コンテンツに落とし込んでいきました。結果、“いきものを守る”、“その土地の自然環境を守る”ためのアクション自体がツアーのコンテンツとなっていきました。地元の人の協力がないとできないこともあり、様々な立場の方との丁寧なコミュニケーションが大切なのだと感じました。
柴崎さんは、静岡市「遊木の森」における、企業と共に進める森づくりについてお話いただきました。“森づくり”と聞くと、まず植樹のイメージがあると思います。その次に、下草刈りなどの手入れを想像されるかと思います。しかし、そもそも「どういう森をつくりたいのか?」というゴールを描かないと始まりません。“森”とひとくちに言っても、様々です。この森づくりのプロジェクトでは、単に「こういう森を作りましょう」と柴崎さんたちエコエデュのみなさんが指導されるのではなく、企業の方々と共に「どんな森にしたいか」を話し合うところから始めたそうです。この目的意識を合わせること、対話を繰り返し双方理解し合うことがとても大切だったということでした。
最後に、佐藤さんの方から、この分野における金融機関の存在の重要性が語られました。豊かな街をつくりたいと思うのは、企業も、NPOも、金融機関も同じです。その中で、地方銀行がこの取り組みをサポートしているということはとても大きなことだということでした。
協働の重要性も、その可能性も感じられる第1回となりました。
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担当:小野