ホールアースエッセンスは、大人のための宿泊型の自然体験プログラム。
日常から離れて、富士山麓の自然を味わい、里山の味覚を楽しみ、時にわいわいと、時にゆったりと過ごす、大人のための休日です。
今回は、9月5日(土)~6日(日)に、「本栖湖カヤックとソロテント」をテーマに実施し、静岡県内や関東圏から4名の方にご参加いただきました。
秋の長雨のなかの、一瞬の晴れ間
この年の秋は、秋雨前線が活発で、雨の多い日が続いていました。
そんな空模様のなかで迎えた、9月のホールアースエッセンス。
自然が相手の2日間。
天気予報を眺めながら、どこで、何をするのかを考えます。
土曜日は、どうやら一瞬だけ晴れ間が訪れそう。
それならば、とカヤックを積み込み、本栖湖へ向かいました。



湖へ
湖畔の駐車場に車を停め、カヤックを湖まで運びます。
風はほとんどありません。
湖面も穏やか。
晴れた日の本栖湖は、午後になると風が吹き始めることが多いのですが、この日は曇りがちだったこともあり、湖は静かに私たちを迎えてくれました。
陸上でパドルの使い方やカヤックの操作を確認し、ライフジャケットを身につけます。
万が一、転覆したときにはどうするのか。
自然の中で遊ぶからこそ、楽しさだけではなく、もしものときの備えも大切です。


準備を整えて、いよいよ湖面へ。
ひと漕ぎ。
ひと漕ぎ。
パドルに力を込めると、カヤックは思っていたよりもすっと前へ進んでいきます。
最初は思うように漕げなかったメンバーも、少しずつコツをつかみ、自分の思う方向へカヤックを進められるようになっていきました。
できなかったことが、できるようになる。
その小さな上達がうれしい。
水の上では、普段とは少し違う感覚が身体に入ってきます。
パドルから伝わる水の重さ。
湖を渡る風の音。
そして、秋の湖の冷たさ。


この日は水の透明度も高く、カヤックの上から湖底までよく見えました。
深いところでは5mほど。
水面の下に広がる世界を眺めながら、ゆっくりと湖を進んでいきます。
すると、北の空から少しずつ雲がほどけてきました。
雲の切れ間から、太陽が顔を出します。


さっきまで灰色だった湖面に光が差し込み、本栖湖が一気に表情を変えていきます。
秋の長雨のなかに訪れた、一瞬の晴れ間。
その時間を逃さず、私たちは湖の上にいました。


里山の恵みをいただく
湖から戻ったあとは、みんなで夕食づくり。
今夜のテーマは、「里山の恵みのごはん」
富士山の麓で育まれた肉や野菜、そしてホールアースの敷地で採れた栗。
今夜のメニューは、
・鹿のサイコロステーキ
・タジン鍋
・栗ご飯
です。



まずは、富士山麓の鹿肉。
今回使うのは、先日精肉したばかりで、冷凍していない夏鹿です。
鹿肉というと、脂の少ない赤身肉というイメージがありますが、夏の鹿はしっかりと脂がのることがあります。
この脂は時間が経つと固まりやすいのが特徴。
だからこそ、鹿肉は焼きたてを。
みんなでスキレットを囲み、油をひいて鹿肉を焼き上げます。
ジュッ、と音を立てながら焼き色がついていく。
焼き上がったら、まだ熱いうちにいただきます。
鹿肉の旨みと脂の甘み。
自分たちで焼いたからこそ、なおさらおいしい。

そして、栗ご飯。
栗はホールアースの敷地で採れたものです。
ひとつひとつ皮を剥いていく。
これが、なかなか大変。
けれど、自然の恵みは、採ったら終わりではありません。
手をかけ、時間をかけて、ようやく食卓に並びます。
炊き上がった栗ご飯からは、ほのかな甘い香り。
ほくほくの栗を頬張ると、秋の気配を感じます。
そして、地元の野菜をたっぷり使ったタジン。
いくつもの野菜とスパイスを重ね、じっくりと蒸し上げます。
火が入るにつれて野菜から水分が出て、鍋の中でゆっくりとうまみが重なっていく。
蓋を開けた瞬間に広がる香り。
野菜の甘みとスパイスの香り。
湖でたっぷり身体を動かしたあとの身体に、里山の恵みがしみわたります。
自分たちでつくり、火を入れ、みんなで囲んで食べる。
そんな時間もまた、自然の中で過ごす楽しみのひとつです。



森の中で眠る


夜は、ホールアース自然学校の緑の中にあるテントサイトへ。
それぞれのソロテントに入り、今日一日を終えます。
川の音。
虫の音。
風に揺れる梢の音。
人工的な音の少ない夜。
テントの中で、その音を聞きながら眠りにつきます。
朝の里山を歩く

朝。
少しひんやりとした空気のなか、看板犬のサトちゃんと一緒に朝の散歩へ。
棚田の広がる里山を歩きます。
朝の光。
澄んだ空気。
昨日とはまた違う、静かな時間。
歩いているうちに身体も目を覚まし、少しずつお腹も空いてきます。
自然の中を歩いたあとの朝ごはんは、やっぱりおいしい。
鹿革クラフト

2日目は、鹿革を使ったペンケースづくり。
富士山の麓で捕獲された鹿。
その命をいただくことは、肉を食べることだけではありません。
できる限り余すところなく使い、次の形へつないでいく。
今回は、その鹿革を使ってクラフトを楽しみます。

革は布と違って、そのままでは針を通すことができません。
菱目打ちという道具を使って、ひとつひとつ穴を開けていきます。
いくつかの色の革から、ファスナーとの組み合わせを考える。
色を選び、形を整え、縫い方を教わったら、あとは自分の手で。
チクチク。
ひと針、ひと針。
革に針を通していきます。
作業が始まると、自然と会話も少なくなっていきました。
目の前の革と、自分の手に集中する時間。
忙しい日々のなかでは、なかなか持つことのできない時間です。
気がつけば、あっという間に午後。
最後のひと針を縫い終えて、ようやく完成です。


世界にひとつだけの、自分のペンケース。
自分で選び、自分の手でつくったものだからこそ、きっとこれからも大切に使いたくなる。


ホールアースエッセンス
今回は、天気と相談しながら過ごした2日間でした。
雨が降るかもしれない。
風が吹くかもしれない。
晴れるかもしれない。
自然のことは、僕たちの思い通りにはなりません。
だからこそ、天気を読み、その日の自然に合わせて予定を変えていく。
晴れ間を見つけて湖へ出て、
風のない水面を漕ぎ、
土地の恵みをいただき、
森の中で眠り、
鹿の革に新しい命を吹き込む。
そんな2日間でした。
自然を思い通りにするのではなく、
自然に合わせて、自分たちの過ごし方を変えていく。
そこには、普段の暮らしでは忘れてしまいがちな、少しゆっくりとした時間がありました。
秋の長雨のなかに訪れた、一瞬の晴れ間。
その一瞬を楽しめたこともまた、今回のホールアースエッセンスのひとつだったのかもしれません。

