富士山麓ジビエとは

「富士山麓ジビエ」は、富士山南麓の森をベースとして主に自然ガイドの活動を行う「ホールアース自然学校」が運営する野生鳥獣対策チームです。「ホールアース自然学校」は美しく豊かな自然で私たちの生活に恵みをもたらしてくれる富士山の南側に位置する静岡県富士宮市の里山にあります。

富士山の森がピンチ

私達が暮らすこの富士山麓の森が、実は2010年頃より様子が変わってきていました。雑木林では笹原や藪が少なくなり、広葉樹の幼木を見かける機会が少なくなってきていたのです。
また注意をして観察すると、針葉樹の森では木の皮が食べられてしまう、樹皮剥ぎの被害が増えていました。
そうです、富士山では野生動物(特にシカ・イノシシが)が急増していたのです。
山でシカ・イノシシが増えると山の中の食べ物がなくなり、動物たちは里山に下りて来るようになります。里山に来た彼らが食べ物を求めて入るのは畑や田んぼで、その農作物の被害は私たちの住む富士宮市では年間1000万円以上と報告されております。
森の中では植樹をした幼木も食べられてしまい、建築材用の針葉樹の樹皮剥ぎ被害もあり、林床の草木も食べつくされ、表土の流出も起こってきていました。

被害状況

爆発的な増加

ニホンジカやイノシシは条件が揃うと年率20%の勢いで生息数を伸ばします。少ない個体数での20%増は大きな問題にはなりませんが、推定生息数が1万頭を超える富士山麓では年率20%は2000頭の増加になります。
一方、その野生動物を捕獲する猟師の数は高年齢化に伴い減少傾向にありながらも、年間の捕獲数は増えていて、猟師一人あたりの負担が増加傾向にあるという状況に陥っていました。

廃棄される命

では捕獲された野生鳥獣はどうなるのでしょうか。
昔ながらの仲間と行っていた狩猟は、大勢の仲間と協力をして山に入りシカ・イノシシを狩り、獲た動物は仲間と解体をして山分けをして大切に食べていました。
しかし現在では、夏場の駆除捕獲では一人あたりの捕獲数も増え個人消費では追いつかないほど獲ってしまっているのが現状であり、食べきれない獲物は山に穴を掘って廃棄されていたのです。この現状に多くの地元猟師は心を痛めていました。

 

 

 

 

富士山麓ジビエができた理由

富士山の麓では林業・農業・酪農などの一次産業が営まれております。その営みと人間社会と野生動物との間で軋轢が生じていることは、地域の自然を守る活動をしてきた「ホールアース自然学校」が、中山間地での自然と向き合う活動をしていくと必ず当たる問題であり、田畑への被害、森林への被害など活動の中で数々のその現実を目の当たりにしてきました。

野生鳥獣とのこのような問題には、地域行政も多くの予算と人員を充てて取り組んできました。
そして私たちもまたこの問題に取り組んでまいりました。この問題の解決手段の1つである狩猟を行うため、スタッフ自らが狩猟者となり捕獲を始め、大人から子供まで幅広い年代の方を対象に、ジビエ料理教室やシカ革クラフト教室等を開きこの問題を知って貰うための活動も行っています。
合わせて、狩猟に興味を持っていただき、狩猟者を少しでも育成できることを願い、狩猟の魅力を伝えるワークショップや狩猟技術講習会も開催してまいりました。
しかしそれでも尚、先に述べたように獲った野生鳥獣の命は無駄になっている現状があり、この問題に関わる者が皆そのことに心を痛めてきておりました。

この問題を何とか打破し、狩猟で得た獲物の命を無駄にしないためには、野生動物を食肉として流通に乗せるための衛生的な解体処理施設が必要不可欠でした。
そこで地域の行政の方々や猟友会の皆様からもご支援を頂き、2018年3月に「富士山麓ジビエ」を開設・運営する事が出来るようになったのです。

私たちは富士山麓で自然ガイドとして活動をしているからこそ出来ることを大切にし、微力ながらも地域の自然と人の営みの為の一助となることを願い、「富士山麓ジビエ」として活動を継続してまいります。

森を調査し適正に駆除

 

ホールアース自然学校 ジビエ加工施設
名 称 野生動物解体処理施設「富士山麓ジビエ」
所 長 浅子智昭
所在地 〒418-0116
静岡県富士宮市上条1457-1
電 話 Tel 0544-66-0152(本部)
E-mail gibier@wens.gr.jp
設立 2018年3月23日
主な事業内容 ・シカ・イノシシなどのジビエ肉の販売
・富士宮市内で捕獲された野生動物の買取
・富士山麓ジビエの施設受入
・鹿革クラフト体験
・ジビエ料理体験
・狩猟技術講習会
・狩猟体験プログラムの実施
・森林環境教育の実施
・富士山の自然についての講話

 

ホールアース自然学校について

ホールアース自然学校では自然ガイドを営みながら「地域の自然を守る」活動をしています。
富士山西麓の田貫湖周辺の人工林では間伐作業のボランティアをしたり、地域にある放置竹林では、竹林整備のボランティアを募って整備をする「里山つなぎ隊」を実施もしています。

 

ホールアース自然学校周辺では耕作放棄地も増えてきて問題になってきていますが、この現状に対しては農業生産法人を立ち上げて「ホールアース農場」として、田畑を耕し農作物を作り農地を守っています。
また、富士山南麓では地域の小学生と共に植林活動も行ってきました。

 

私たちホールアース自然学校は、1人ひとりが「人・自然・地域の共生する暮らし」の実践を通じて、感謝の気持ちと誇りを持って生きている社会を目指して活動してまいります。